エロバナ~エロいお話し~

非日常的なエッチな体験談・官能小説を集めて配信しています。

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注視の中で脱糞して見せたこともあった

豪奢な椅子に腰かけ、膝に置いた愛用の銃を拭きあげる。
銃器の手入れは、伯爵が自らの手で行う数少ない作業のひとつだった。
長身の銃はやや旧い形式。獲物を捉えたときの手応えが気に入っている。だが今日の狩りで役に立ったのは、普段はほとんど使われることのなかった別の機能。その働きを褒めるように、磨きこまれた銃床を指先で撫でて。
そして、伯爵はゆっくりと視線を上げた。
目の前に今日の獲物が吊られている。両手を上に広げ、かろうじて爪先がつく態勢で。
いまも窓の外に降り続ける雪のような白い肌をさらして。
「……素晴らしい」
陶然と伯爵は呟く。巨大なモノ・アイに、不吉な輝きを浮かべて。
それはじっくりと眺め上げ眺め下ろした獲物の肢体に対する賛辞であり、同時にこの状況にいたる経緯に向けた言葉でもあった。
吊られた獲物、白く艶美な裸身をさらした女の長い睫毛がかすかに揺れる。伯爵へと向けられるかと見えた視線は、すぐにまた下へと戻った。盛り上がった胸乳があえかに息づく。
そう、女は生きている。それは、狩りの成果としてこの部屋へ運びこまれる獲物としては、まったく異例なことであった。
「ふふ…」
そして、その異なる状況の中、伯爵は上機嫌を隠そうとしない。
よくぞ、あの瞬間、咄嗟にパラライザーへと切り替えたものだと自賛する。よくぞ、そんな機能が愛銃に備わっていることを思い出した、というべきか。今まで使ったこともなかったのに。なにより疾駆する馬上から、雪夜の中を逃げ惑う獲物の類まれなる輝きを見極めた、我が慧眼こそ誇るべし。
ゆっくりと伯爵は立ち上がる。銃を置き、替わりに脇机の上にあった鞭を手にとって。日頃、下僕どもに使っているのとは違う、とっておきの皮鞭─本当に、この獲物は果報者だ─の、心地よい撓りを確かめながら、一歩踏み出して。
「おまえは、実に運がいい」
尊大な口調で、女へと話しかける。
「その美貌と見事な身体、塵芥のごとき人間ふぜいには不相応な美点のおかげで、路傍に果てることを免れた」
さらには、と大仰な手振りをそえて、伯爵は続けた。
「こうして、貴様らには雲上の世界である我が城へ足を踏み入れるを許され、私の楽しみに奉仕する栄誉を賜ることとなった。どうだ? 嬉しかろう」
「…………」
反応はない。女は静かに伏せたままの眼を上げようともしない。反発や敵意も示さないが、恐怖や哀願の色も、その臈たけた面には浮かんでいない。ここまで唯一女が動揺を見せたのは意識が戻った直後、子供の姿を探したときだけ。ガキのことなどどうでもよかった伯爵が「見逃してやった」と簡単に告げると、深い安堵の息をついて。その後は、ただ静かな諦めの中に沈黙している。
確かに諦めるよりない状況ではあっても、潔すぎるのではないだろうか。
おかしな女だ──と思って、しかし伯爵の上機嫌が損なわれることはなかった。下問に答えないという無礼さえ、流してしまう。
実のところ、近づいて改めて眺める女の肢体に、また見入ってしまっていた。
それほど若くはない。連れていた子供は、そこそこの年令だったようだし。
豊満に突き出した釣鐘型の乳房。少しだけ肥大して色素を乗せた乳頭は、子に乳をふくませた名残か。
なめらかな腹。くびれたウエストから張り出した豊かな腰。引き締まって、しかししっかりと肉を実らせた肢。
完成された女体。つくづく─よくもあの最下層の世界に、このような女が存在したものだと思わせる。
かたちの良い臍の下、閉じ合わせた両腿の付け根にもやう恥毛、両腕を吊られ露わになった腋窪に生えた未処理の毛ですら、不思議にむさ苦しさを感じさせない。
ふと疑念にかられて、伯爵は女の腋に顔を寄せた。機械伯爵に鼻はないが嗅覚はある、それも強さを恣意的に操れるすぐれものだが。感度を上げて、ようやく僅かに女の体臭、汗と分泌物の臭いを捉えた。
「ふむ。生身の女であることは間違いないか」
「…………」
「けしからんな」
わざとらしく、伯爵は語気を強めた。
「不浄なる肉をもった人間の分際で、まるで精霊か神仙のようなその取り澄ましようは、まったくけしからん」
スッと、手にした鞭の先を、女の胸へと向ける。ふっくらと盛り上がった乳うんを円くなぞり、乳首をくすぐる。
微かに息をつめる気配があり、拘束された身体が強張るのが鞭づたいに感じられた。それだけのやはり薄い反応だったが。なおも伯爵が執拗に鞭を操ると。黙した女の肉体のほうは、存外な早さで反射を示した。
「……ほ。尖ったな」
愉しげに伯爵が指摘したとおり、皮鞭の舌で嬲られた女の乳首は、血の色を集めて固く尖り立っていた。
「所詮は、卑しい血肉にとらわれた哀れな人間よな」
嘲りながら、伯爵は鞭を女の頤の舌に差しこみ面を上げさせて、瞑目した美貌に滲むそれまでより顕著な感情、羞恥の色合いを楽しんだ。
「これから、たっぷりと思い知らせてくれる。それはおまえにとって、この上なく甘美な時間となるぞ」
うたうように伯爵は宣告して。その言葉に自身の胸を躍らせる。
情欲、と呼んでいい情動が、全身機械の伯爵の中に燃え上がっていた。
その身のすべてが機械化されている伯爵だが、この獲物の女の極上の肉体を犯すことは可能だ。そのためのアタッチメントは、単なる張りぼてではなくて、さまざまな機能を持つ。相手となる女の肉体に最も快感を与える大きさ形状に変化させられるし、女の中でありとあらゆる動きを演じることも出来る。思いのままに、欲望の塊を吐き出すことさえ可能だった。
「おまえは、泣いて私に感謝することになるぞ。こんな至福を与えてくれてありがとうございます、とな」
それは間違いなかった。そうならない女はいない。
だが、まさか機械伯爵ともあろうものが、いくら気に入った獲物だからといって、ひたすらその肉体を姦しつづけるような真似をするはずがない。それではあまりにも芸がないし、貴族の楽しみとして美しくない。
すでに幾つかのプランは伯爵の中にあった。
媚薬責めにしたあとに拘束放置して、焦熱の中にのたうたせる。この氷のような女が見苦しく泣き喚いて快楽を乞うさまを眺めるのは、さぞや愉しかろう。
この城の中で最も卑しいものたち、家畜同然に扱っている半人どもに与えるのもいいだろう。ロボトミー手術だけを受けて肉体は生身を残しているあの連中、この女の身体を目の前にしたら、餓鬼のように逸り狂って群がるに違いない。身体だけは頑健で強大なやつばかり、その普段は使い道のない巨大な性器をおったてて。
ああ、ならば無論、猟犬どもとも番わせてやらねばならん。やはり半身を機械化された利口な獣たちだから、女を嬲り犯せという命令も見事に果たすことだろう。
それらの暴虐と恥辱の坩堝に投げ込まれて、しかしどうしようもなく忌まわしい悦楽に溺れていくこの女の姿を眺めながら飲む酒は、格別に美味であろう。そして、いまは奇妙な高貴ささえ纏ったこの女が、ひとつずつ堕落の階梯を下るごとに、私からは褒美を与えてやるとしよう。腐敗していく魂に見合うように、この美しい肉体を改造してやるのだ。
「……クク。さほど時間も待たずに。おまえは私の足元にひれ伏して哀願することになる。どうか、この悦楽の底にいつまでも棲まわせてくださいと」
だが、それだけは叶わない望みだ──という宣告は、胸の中に落す。
所詮は一時の気まぐれであることを、伯爵は自覚している。飽きるまで。実際にいつまでになるかは、女しだいだが。女の行く末は、伯爵のコレクションを飾ること。それは確定した未来である。
……と、そのとき浮かんだ着想。そういえば、と。
女の身体をひとつ、用意せねばならないのだった。それは伯爵が唯一膝を折らざるをえない上位者からの依頼。
「……面白い」
伯爵はひとりごちる。
もとより、これほど見事な肢体なら、依頼者も文句はないだろうが。このままではなく、自分が調教し尽くした状態で明け渡す。
彼我の力関係を思えば、リスクが高すぎるだろうが。
「だが、面白いアイディアだ」
捨てるには惜しい発想だった。
永遠の命と絶大な権勢。機械伯爵は退屈な日々に倦んでいる。
クツクツと、暗い笑いを洩らしながら、伯爵は女の背後へとまわりこむ。
「素晴らしい」
また、その賞賛が口をついた。長い髪を垂らした背肌のなめらかさと、はちきれそうな臀。
嬉々として。伯爵は振り上げた鞭を、したたかに豊臀へと叩きつけた。
「……っ!」
小気味よい肉の音、ビクリと背を反らした女の喉から洩れた微かな苦鳴が、伯爵の胸を躍らせ、次なる打ちゃくへと駆り立てる。
「クク……フハハハ」
抑えた笑いが哄笑へと変じていく。
この上なく、機械伯爵は上機嫌であった。







「メーテル」
鉄朗は呼んだ。顔は車窓へと向けて、星の海を眺めたまま。
「……なに? 鉄朗」
しっとりとした声が応える。メーテルの眼が自分の横顔に向けられていることを鉄朗は感得する。
「次の星まで、あとどのくらい?」
向かいの席で。懐中時計を確認する気配。
「あと二十八時間よ」
「そう」
それはどんな星か? と尋ねるのがいつものパターン。この旅の間に何度となく繰り返したやりとりだったが。
鉄朗はなにも訊かず、しばし沈黙がとざす。
「次の星でも…」
やがて、鉄朗は切り出す。少しだけ、かすれた声。
「次の星でも、メーテルは男に抱かれるの?」
「…………」
ゆっくりと鉄朗は顔をめぐらせ、メーテルの美しい双眸を見つめた。
「僕は知ってる」
先んじて、鉄朗は告げた。
「……いつから?」
「だいぶ前から」
僅かに震える声でメーテルが質すのに、短く答える。
そう、それは……何番目の星に停まったときだったろうか。
いつも鉄朗を置いて単独で行動するメーテル。それがつまらなくて、寂しくて。鉄朗はそっと後を尾けてみた。
そして、寂れた星の暗い路地裏で、その星の男に身体を与えるメーテルの姿を目撃した。コートの前をひらいて、壁に背をあずけて、立ったままメーテルと男は交わっていた。激しく。
別人かと思った。そんな場所でそんな行為に及ぶ異常さより、その最中のメーテルのあまりの痴れ狂いぶりに。
いつもは声を荒げることさえないメーテルが、獣のように咆哮し卑猥な言葉を吐き散らしていた。男が果てると、すぐに地べたに膝をついて、その口に汚れた事後の性器を咥えこみ無理やりに奮い立たせて、次の行為を誘った。
立て続けに三度交わり、ついには、その粗末な身なりの男が音を上げて、ようやく露外での情事は終わった。メーテルはまだ不満そうだったけれど。
身なりを整え、別れる際に、メーテルは男に金を渡していた。彼女が行きずりの男を買ったことを鉄朗は知った。
逃げるように、鉄朗はその場を離れ、列車へと駆けもどった。
ほどなく帰ってきたメーテルが、その表情も態度もあまりにも普段どおりで。あれは夢だったのではないか? と疑ったことを覚えている。夢であったと、思いたかったのだ。
夢でなかったことを、次の星で思い知らされた。
やはりひとりで出かけたメーテルは、土地の男を誘い関係をもった。鉄朗が盗み見た行為は、前回に見たものよりさらに激しく倒錯していた。前の星での情事は、あれでもメーテルには軽い行為だったのだとわかった。停車時間が短かったために。
安っぽい連れ込み宿の一室で、今度はメーテルはコートを脱ぎ捨て、その眩いばかりの裸身をさらして、奔放に快楽を貪った。単純なセックスではなかった。床に四つん這いになったメーテルは、その尻をこの上なく淫らにふりたくって、鞭をねだった。鞭はメーテルの手荷物のなかにあったものだった。若い男がおそるおそる鞭をふるうと、メーテルは“もっと強く”と叱咤した。彼女の狂乱にまきこまれたように若者の行為が激化すると、メーテルは号泣するような嬌声を張り上げて、それだけで何度となく快楽を極めた。
それを、鉄朗は窓の外から眺めていた。
新たな星に着くたび、メーテルの男を漁る行動は繰り返され、鉄朗は可能な限り、それを覗き見た。
相手は複数のケースもあった。鉄朗と同じくらいの少年たちの集団もあった。相手がどうだろうと、常にメーテルは獣じみた激しいセックスを好み、虐げられ辱められ汚されることを望んだ。男たちの精液にまみれ、ときには小便を浴びせられて、法悦の笑みを浮かべていた。注視の中で脱糞して見せたこともあった。何食わぬ顔で、列車に、鉄朗の対面に戻ったメーテルが、時折ひそやかに腰をよじることがあって、それはついさっきまで苛烈な鞭打ちを堪能していた臀肌を座席に擦りつけて、熱い余韻の疼きを鎮めているのだと、こちらもひそかに観察の眼を向ける鉄朗には、すぐにわかった。
星と星の距離が長く、数日も列車の中で過ごすときには。メーテルは車掌を誘った。眠る(ふりをする)鉄朗を残し、車掌室へと向かって。渋る車掌に無理やりことを強いた。狭い部屋の中で汽笛にも負けないような絶頂の叫びを迸らせた。
鉄朗は知っていた。自分をこの途方もない旅へと誘った謎の女性、それでも母を奪われてからの自分がはじめて得た味方と信じられる美しい女性の裏の顔を。
自分が知っていることをいままで隠してきた理由は、ひと口には説明しがたい。いまこのときに、それをぶちまける気になったわけも。
再びとざした沈黙は息苦しいものだったが。糾弾というほどの剣呑さはなかった。
メーテルは、その長い睫毛を伏せて、珍しい逡巡の気色をあらわしている。言葉を探すように。
だから、このときも、鉄朗が先に口を開いた。
「どうして?」
「……この、私の身体には、そう刻みこまれてしまっているから」
曖昧な問いかけに、曖昧な答えが返される。
「どういうこと?」
「……この身体は……そうせずにはいられない。私の意志には関係なく」
ごまかしともいえるような口上だったが。何故か、鉄朗にはそう片付ける気にはなれなかった。
「メーテル」
鉄朗は呼んだ。非難や攻撃の色のない、ひどく素直な声で。
「メーテルの身体、見せてよ」
「…………」
メーテルは物憂げな瞳で、少年の真摯な表情を見やって。
やがて、膝の上の帽子をどけ、静かに立ち上がった。コートのボタンに白く細い指がかかる。
コートがすべり落ちる。衣擦れの音はなかった。そのはずで、長い外套一枚の下には、メーテルはなにも身につけていなかった。
ロング・ブーツだけを残した姿で、眼前に立った裸身を、ポカンと鉄朗は見上げる。
「……すごい…」
思わず、率直な感想が口をついてしまう。その肉体の、圧し掛かるような迫力に。
これまでは、物陰からドアの隙間から、遠く盗み見るだけだった。
メーテルのあのコートには魔法の仕掛けでもあるのではないか? と埒もない疑問がわいてしまう。ひたすら、すんなりとスマートに見えていた体つきが、それ一枚を脱いだだけで、これほどの量感をあらわにするとは。重たげに張り出した乳房、腰のふくらみ、太腿の肉づき……。
だが、それらの特徴以上に鉄朗の目を奪い息をのませたのは。施されたいくつかの装飾だった。
たわわな胸のふくらみの頂上、薄茶色の両の乳首から垂れ下がった金の飾り。大ぶりの肉蕾を横に貫いた止め具から下がった短い金鎖の先には、紅い宝石。その大きさは錘のよう。
視線を下にずらせば。座ったままの鉄朗の鼻先、メーテルの綺麗な髪よりやや濃い色の恥毛に彩られた肉丘の中、やはり金のリングが、肉の突起を絞るように縊っている。金環はその下側に顔を覗かせた左右の肉弁にもぶら下がっていた。
それら奇妙なアクセサリーのことも、覗き見の中でおぼろげに確認してはいたが。こうしてまじまじと見せつけられれば、その異様さに息をのまずにはいられない。
「痛くないの?」
鉄朗の問いに、メーテルはかすかに首を横にふる。
「じゃあ……気持ちいいの?」
今度は、なんの応えもなかった。辛そうに、恥じ入るように、メーテルは伏せた眼を逃がした。
鉄朗は、ほのかな臭気を鼻に感じた気がした。秘密めいた、罪のような匂いを。
「誰が、こんなことをしたの?」
「…………」
メーテルは答えず。ただその頬に深刻な翳りを刷いて。
そして、鉄朗の前で、ゆっくりと身体をまわした。
流れ落ちる長い髪を肩口で束ね横へと払うと、白い背と豊かな臀があらわになる。
また鉄朗は息をつめた。
かたちよく張り詰めた豊かな臀には、数日前の狼藉の名残、紅い条痕が縦横に走っていたが。そんなものより強烈に自己を主張しているのは、蒼白いような臀たぶの肌の上に黒々と刻みこまれた烙印。複雑な紋章の意味するところは鉄朗にはわからないが。ただ決して消えることのない焼印が声高らかに告げていることは直感的に理解できてしまった。すなわち、“この臀この肉体は自分のものである”と。
「そうよ」
鉄朗の内心を読んだように、メーテルが言って。指先で、その禍々しい刻印をなぞる。
「これは、この肉体の所有者の署名。そして、この肉体に賭けられた呪いの証」
手放され舞い下りた髪が、その忌まわしい証を覆いかくし、メーテルは鉄朗に向き直った。
「この烙印が疼くとき、この肉体は渇望に耐えられなくなる。いたぶられ、辱められることを求めずにはいられなくなるの」
「……誰なの? それは」
その紋章の持ち主への敵意に尖った声で、鉄朗は訊いたが。
メーテルはかぶりを横にふった。
「……いまは言えない。でも、いずれ鉄朗も知ることになる……」
とても悲しげな声で、そう言った。
「メーテルは、そいつのものなの?」
「私ではなく、この身体が」
また、メーテルはそんな言い方をした。自分自身の存在と、己が肉体を分け隔てるような口ぶり。
しかし、その意味するところを、いまの鉄朗に理解できるはずもなく。
鉄朗は燃え上がる瞋恚のままに手を伸ばし、彼を嬲るように揺れているメーテルの大きな乳房を両手に握りしめた。
「鉄朗?」
驚いて、しかしメーテルはさしたる抵抗も見せず、鉄朗のするがままに任せた。
ギュッと力まかせに指をくいこませて、メーテルから小さく苦痛の声を絞り出させると、鉄朗は手の動きをゆるめた。
「……柔らかい…」
うっとりと呟く。掌に伝わる肉質は、どこまでも柔らかく、包みこまれるようで。こうしているだけで幸福な気持ちになる。チャラチャラとなる装飾が邪魔で不快だけれど。おっぱいの触りごこちは、すべすべして、しっとりとして、暖かくて。そして、とても懐かしい……。
……懐かしい?
その自らの感慨に不審を感じて、揉み立てる動きを止める鉄朗。
それに乗じて、メーテルがそっと鉄朗の肩を押しやり、乳房を解放した。
「もう、駄目よ」
「どうして?」
一瞬の疑念は忘れて、鉄朗は抗議する。
「どうして、僕とは駄目なの?」
「いけないの。あなただけは」
「そんなのって、ないよ。またメーテルは次の星で、知らない男に抱かれるんだろう? 呪いだかなんだか知らないけど、どうしてもしなきゃならないなら、僕が、僕が、メーテルを」
「駄目なのよ」
苦しげに、だが断固としてメーテルは言い放った。
「あなたは、この身体と触れ合ってはいけないのよ……」
「そんなの……」
あまりにもメーテルが辛そうで悲しそうだったから。鉄朗の声は尻すぼみになる。
メーテルはコートを纏い、席につく。
「少し、眠りましょう」
いつものように、穏やかな顔と声でそう言った。この数分間の出来事など、なかったみたいに。
そして、自分から先に眼を閉じてしまった。
「…………」
無論、眠ることなど出来ず。しかし、これ以上メーテルを問い詰める気にもなれずに。
鉄朗は不機嫌な顔で、瞑目したメーテルを見つめた。
汽車は、星の海の中を突き進んでいる。
この旅の先になにが待ち受けるのか。
いまさらとも言える疑問と不安を噛みしめながら、少年は物言わぬ女(ひと)の美しい面を、ただ見つめていた。
汽車は往く。いま、汽笛が鳴る。



──すべてを。
メーテルが、彼女の“肉体”を自身とは別の存在のように言っていたわけを。その肉体に刻まれた紋章が誰のものであるかを。それがなにを意味するのかを。
メーテルが、自分だけを頑なに拒んだ理由を。
彼女の予言のとおり、やがて鉄朗は知ることになるが。それはまた別の物語である。


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